そらとぶさかな

アングライター 杉人(すぎんちゅう)の釣り人blog

忘れモノを作るのも旅

太陽が昇り始め、一人また一人とアングラーが減り始めた。朝まずめのワンチャンス狙いの方々が帰り出す中、黙々とキャストを繰り返す。ここに案内してくれた釣友の気持ちを思うと、キャストを止める訳にはいかない。カメラマン的には失格だか、とにかく釣り上げるまでは集中したかった。

余裕がないと言われればそうなのだが、手に残るあの強烈な引きが写真より釣師を優先させている。


まだチャンスはある。


海の様子は変わらず。ナブラが起こる訳でもなく、ベイトが逃げる訳でもなく、静かにゆっくり流れている。
べた凪、来る前に想像していた光景とはかけ離れていて、不思議な気分だ。
そんな気配もない海から突然現れる青物。集中してないとまたヤられる、そんなことを考えていた。


「来た!」
右隣の釣友のロッドが絞り込まれている。巧みなロッド捌きで上手く寄せる。私はタモを持って走る。デカい、入るか?

頭からネットに収めることが出来た。
「よっしゃ!」
パチンとハイタッチを交わす。想像以上に大きい。

「さぁ、投げて投げて!」

急かされながら元のポジションに戻り、キャスト再開。




終了時間が刻一刻と迫ってくる。今回は時間の制約がある釣り旅。残りはもうわずかだ。周りを見れば、残っているのは私達だけになっていた。

手間の根に入られる前にリフトするか、フリーにして離れるのを待つか。頭の中で何度もシュミレートしながらキャストを続ける。


ルアーが張り出した瀬に差し掛かる瞬間、白っぽい魚体が飛び出した。
一瞬の判断でリフトするを選んだ私は一気に止めに掛かる…







ルアーだけが水面から飛び出してきた。

タイムアップ。
未練を残し、帰路につく。降りてきた斜面を登る足が重く感じる。というか、運動不足だな。慣れない磯ゆえ、地に足がつかない感覚。体力が必要な釣りだと感じた。

息も絶え絶え車まで戻ってきた。あまりにギリギリまで粘ってしまった、仕事の時間が迫る。

釣友の魚をお土産に頂いた。本当にありがたい。この写真を見るたびにあの強烈な引きを思い出すだろう。

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また来る。絶対来る。次は仕留める。
釣友に感謝し、長崎を後にした。

忘れられない地になった旅。
大きな忘れモノをした旅になった。
おかげで忘れモノを取りに来る口実も出来た。





翌日、釣友から写メが送られてきた。
腕が引き攣りそうなほどの魚をにやけ顔で掲げる姿。

しばらく夢に出てきそうだな…